Stable DiffusionなどのGeneraticeAI時代におけるEコマースの購入体験が大きく変わる。私はそのように考えています。少なくともこれまでには想像できなかったような、新しい購入体験ができるようになる。
今回はAIがもたらすお買い物体験の変化を考えていこうと思います。
検索最適化の時代
Amazonが登場してから、私たちの買い物体験は大きく変わりました。
自分が欲しいものを学習し、欲しい可能性が高い商品が次々におすすめに表示される。商品を検索しても、自分が好きそうな商品が整理されて表示される。
何度も何度も検索を繰り返す必要がなく、膨大な商品点数の中から、自分が欲しいものをすぐに提案してくれる。とても気持ちが良く、頭を使う必要がない。
そんな買い物体験を実現したのがAmazonでした。
検索から創作へ。作りながら最適なデザインを生み出す未来
Generative AIがデザイン制作の現場で役に立つのかどうかについて検証した記事を以前書きましたが、デザインのアシスタントとしてはとても役に立つという結果となりました。
自分にぴったりなもの、最高に自分にあっているものは、オーダーメイドで作るしかありません。最高の形状、最高のカラー、最高の質感。
しかしながら、私たち全員が思ったことを自らデザインできるわけではなく、プロのデザイナーに依頼して、要望を形にしてもらうしかありませんでした。
結果的にオーダーメイド商品は高価となり、なかなか手に出すことができませんでした。
AIデザイナーがアシスタントとして機能する
GenerativeAIがオーダーメイド商品のECサイトに実装されたらどうでしょうか。サイトにはAIデザイナーが待機していて、要望を伝えればその場でデザインを作成してくれます。
デザインの生成は数分で完了し、複数のパターンを提案してくれます。気に入ったデザインがなければ、条件を変えて再度依頼することで、またデザインを提案してもらうことができます。
現実の世界ですと、何度も何度もリテイクを依頼するのはちょっと気を使いますし、これくらいでいいかなーといった妥協も生まれますが、この場合の相手はAIです。嫌な顔ひとつせずにデザインを出してくれますので、こちらも遠慮なく、バンバン依頼することができます。
デザインコストがかからない
通常、オーダーメイド商品を作成する場合、作りたいモノに関する概要や要望をデザイナーがヒアリングし、それをもとにデザインを制作していきますので、当然ですが人件費が発生します。
デザインのラフが完成したら、そのデザインをもとに打ち合わせを行い、修正点を洗い出し、再度デザインを行います。これも人が動きますので人件費となります。
こうしたデザインの工数が、結果としてオーダーメイドの料金に大きく反映されることとなり、料金が高額になっていくのですが、AIの場合は工数がかかりません。
APIの使用量は発生しますが、1つのデザインに対するコストは数万分の1以下に削減されるため、実質コストは0に近づいていきます。
こうなれば、これまでオーダーメイド商品の大きな部分を占めていた人件費が削減されるため、完全なるオーダーメイドであったとしても、料金がさほど高額にならないビジネスモデルが構築可能となります。
創作しながら最適なデザインを探す体験
これまでのように世界中から最適な商品を見つける「検索」ではなく、全くのゼロから自分が満足できる最高のデザインを「創作」していくお買い物体験。
同じことをしようとすれば、プロのデザイナーに依頼をしてお金を払うか、自分でデザインを学び、自らデザインを繰り返すしか方法がありませんでした。
それがAIの登場により、AIにデザインをさせて好きなだけデザインを生成できるようになったのです。
ユーザーの好みを学習し、最適なデザインを創作提案してくれるAIデザイナー
AIデザイナー時代ではAmazonとは全く異なるリコメンデーションが実現されます。
ユーザーが気に入ったデザインを保存していくことで、ユーザーの好みをAIが学習し、デザインの癖を生成。ユーザーの要望に対して、ユーザー好みのデザインを生成するようになります。
検索最適化から創作最適化の時代です。
こうなれば、世界中のどのデザイナーよりも詳しいAIが誕生しますので、今さら新しいデザイナーに一から要望を伝えようとは思わないでしょう。最高の広告塔はドラえもんです。
世界に一つを安価に作り上げる楽しさ
オーダーメイド商品は自分に最適な最高の一品ができるメリットもありますが、様々なデメリットも存在しています。
- 値段が高い
- 要望を伝えるのが面倒
- 届くまでに時間がかかる
AIデザイナーはこれら全てを解決します。
- お手頃な価格(デザイン自動化)
- 要望も簡単(AIだから気を使わない。ユーザーの好みをAIが学習)
- 数日で完成(マスカスタマイズ・サプライチェーン)
一点もの作る体験はとても楽しく、エキサイティングです。自分だけのアシスタントに、好きなようにオーダーを出し、その結果をみながらデザインを完成させていく。
例え自分に絵を描くスキルがなかったとしても、素晴らしいデザインが次々に生成されていく。アイデアが形になっていく。自分だけの特別を簡単に作れる体験は「作ることが好きな人」には刺激的にうつるでしょう。
3Dプリンターなどの工作機器が1点ものを安価に製造する
デザインまではできても、実際に商品にするには課題が残っています。
設計データの作成や管理、1点ものをスピーディに製造できる生産体制の構築。いわゆるマスカスタマイズの世界に対応したサプライチェーンの構築が必要です。
ENCODE社では、EncodeRingの制作を初め、1点ものを安価に提供するための仕組みづくりを数年にわたって実行してきました。
- 3Dデータの自動生成
- 生産工場とのソフトウェアによる連携
- 3Dプリントの導入
- 個別配送
これらのサプライチェーンがあって初めて、AIがデザインした商品を製造し、お客様へ安価にお届けすることができるようになります。
AIがデザインしたオーダーメイド商品を購入する
AIがプロダクトをデザインできるようになり、生成されたデザインを1点もので安価に生産できるサプライチェーンが構築されれば、誰もが簡単に、自分が欲しいデザインを手に入れられるようになります。
Fine Tuningによってデザイナーの癖や、ブランドの傾向が学習され、それぞれのモデルを切り替えながらデザインを生成することもできるようになるでしょう。
(ティファニーのデザイナーがアシスタントとしてついてくれるような感覚です)
ENOCDE社ではデザインデータに基づいてFine Turningを行い、それぞれのデザインの傾向を学習させたオリジナルの学習モデルの開発に着手しています。
誰もが最高のデザイナーを抱えられる未来。最高のデザイナーに気軽にデザインを依頼できる未来。そしてそれを実際のモノとして形にすることができる未来。
これらを実現するべく、AIの開発に取り組んでまいります。