DATA BRIDGEが公開した市場調査レポートが、3Dプリントジュエリーの世界市場は2023年から2030年の間、CAGR(年平均成長率)13.50%で拡大し、2030年には22751.13億ドルになると発表しました。
CADと3Dプリンタ-市場の定義-
3Dプリントジュエリーはその名の通り、3Dプリンタを使用して製作されたジュエリーを指しており、主にCADツールを使用してデザインを製作し、3Dデータを3Dプリンタで造形することで完成します。
3Dプリンタはダイレクト3Dプリントで最終製品をそのまま製作する方法と、伝統的な製造方法であるキャストを用いた方法で製作する2通りが存在します。後者の場合は原型と呼ばれるワックス樹脂を3Dプリンタで製作し、それをロストワックスと呼ばれる方法で鋳造することで製造します。
3Dプリントジュエリーの世界的動向
3Dプリントジュエリーがどのような形で市場を拡大させていくのか、世界的動向を深堀していきます。
市場拡大要因
・ARの普及
CADで製作されたジュエリーは3Dデータとして活用されます。ARの活用は今後ますます増加することが予測されています。特に店頭でしか試すことができなかった試着をARで、自宅にいながら体験できるようになることで、Eコマースがさらに普及していくことでしょう。
弊社で開発しているENCODE Koalaは世界初となるリアルタイム試着に対応したAR試着アプリケーションです。お客様はウェブカメラを通じて、自分の指に3Dデータのジュエリーをはめ込んで試着することができます。
機会
・高度な技術の活用
ジュエリーは、手作業やロストワックス鋳造で作られていますが、これらの工程は高度な専門知識を必要とし、時間もかかります。3Dプリンターを使えば、そのような手間のかかる工程を省くことができます。また、複雑なデザインのジュエリーの製作や、従来の方法では難しい造形も可能です。
特にカスタマイズが求められるような商品については、事前にワックス樹脂を3Dプリンターで製作し、試着してもらうなどすることでお客様とのコミュニケーションを円滑にすることも期待できるでしょう。
3Dプリンタを活用すれば一度の印刷で複数の種類のデザインを同時に造形できるため、時間を大幅に削減可能です。これにより従来の方法では実現できなかった効率化が図られることが期待され、これが市場を拡大するいい機会になるとリポートされています。
課題
・エンジニアの不足
CADエンジニアや3Dプリンタに関する知識を有する人が不足していることが市場拡大の課題であるとレポートで述べられています。確かにジュエリーの世界ではまだまだCADを扱える人は多いとは言い難く、さらに言えば3Dプリンタをフルに活用しているケースも珍しいと感じます。
注文をFAXでやり取りするところも多いですし、まだまだDX化は進まないと思います。一方で、新しい手法を率先して取り入れているデザイナー、メーカーも存在しているのも事実で、今後はそうした方々が市場を切り開いていくものと思われます。
3Dプリントジュエリーの市場規模構成
3Dプリントジュエリーは以下のセグメントで構成されています。
技術分野
- ステレオリソグラフィー(SLA)
- 選択的レーザー焼結法 (SLS)
- デジタルライトプロセッシング(DLP)
- 溶融積層造形法(FDM)
- その他
エンドユーザー
- 宝飾品店
- モール
- その他
用途
- プロトタイピング
- 機能性部品製造
- 金型製作
素材
- 金
- 銀
- 真鍮
- ブロンズ
- ポリアミド
- ワックス
- アルマイト
- その他
DX化が進むジュエリー市場
3Dプリンタの普及やCAD等を使用した3Dデータの製作が一般化されることにより、手作業が中心だったジュエリーの世界はDX化が進むことが予測されます。
特許が切れたことにより3Dプリンタの価格が低下していることや、その性能が年々上がっていることを受け、導入はますます加速することでしょう。CADソフトについてもRhinoなどの高価なソフトだけでなく、Shaprなどの無料から使えるツールも登場するなど、3Dデータ製作のハードルも年々下がってきています。
さらに、スマートフォンの性能が高まり、よりリッチな3Dコンテンツをサクサク閲覧できるようになったことで、ブラウザで手軽に3Dデータを見ることができるようになりました。ECサイトの中で手軽にカスタマイズをしたり、ARで試着できるようになることで、ジュエリーの購入体験にも変化が訪れることでしょう。
さらに3Dプリンタをフルに活用することで、1点もののカスタマイズ商品であってもスピーディに安価に提供できるサプライチェーンの構築も今後、進んでいくことと思われます。すでにENOCDE社でもこうした取り組みを進めており、1点ものを1週間かからずお客様へお届けができるようになっています。
- ECサイトで手軽にカスタマイズ
- デザインをARで試着
- デザインを3Dプリンタで製作
- 数日で製品にしてお届け
こうした購買体験が実現できるようになることで、自分に合った商品を手軽に手にできるような世界がすぐにやってくると思います。さらに先をいく、Generative AI時代のジュエリー購入体験についてもこのブログで公開していきますので、ぜひ見ていただけますと幸いです。
今回は世界の3Dプリントジュエリー市場レポートを参考に、記事をまとめました。
【参考レポート】